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中嶋 聡著「分裂病の実践知と治療」から抜粋

 

はじめに

 

 分裂病者は、ある独特の仕方で「ふつうでない」人たちである。

 このことは、精神科医に明らかであるだけではない。

 精神医学についてまったく素人の、一般社会の人たちにも、直観的に感じとられる出来事である。

 精神科医が感じているのも、これと別の出来事ではない。

 精神科医は、同じことをもっと洗練された形で感受し、表現できるのであるにすぎない。

 素朴な形では、このことは次のようによく言い表わされる。

 「あの人はちょっとおかしい」「ちょっと変わっている」「なんとなく変だ」「普通じゃない」。

 洗練された形では、代表的なものでは、リュムケの「プレコックスゲフュール」があげられる。

 注意してほしいのは、「プレコックスゲフュール」とは大体どんなものか、ある程度以上経験を積んだ精神科医ならだれでも会得しているということである。

 「あの感じ」と言えばお互いにわかりあえる。

 にもかかわらず、それを正確に、言語的に言い表わすことは、きわめて難しいのである。

  分裂病者の「ふつうでなさ」は、いわゆる「プレコックスゲフュール」に尽きるものではない。

 捉え方の方法論によって多少表現は違ってくるが、それをうまく捉え、言葉にし、さらに概念に高めようとする努力は、精神病理学の歴史の中で絶えず行なわれてきた。

 精神病理学におけるすぐれた概念は、すべて、この「ふつうでなさ」を発見し、捉え、概念にしたものであると言っても過言ではない。

 この作業は、まだまだ終わってはいない。

 この「ふつうでなさ」が、なかなか自覚的に気付かれにくいような性質と多様な側面を持っていて、言語化すること、ましてや概念化することがむずかしいからである。

 私は、患者と治療的にかかわることを通じてわれわれに直観的に与えられてくる知のことを、一般に「実践知」と呼ぶことにしたい。私が本書を通じて主張し、また具体的に述べようと思うのは、分裂病の認識――すなわち精神病理の理解と診断のこと――ならびに治療において、「実践知」が大変重要な役割を果たしている、ということである。

 

(中略)

 

 

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